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横浜地方裁判所 昭和61年(行ウ)13号 判決 1991年3月20日

神奈川県茅ヶ崎市松が丘一丁目一番七四号

原告

渡辺馨

右訴訟代理人弁護士

島田康男

神奈川県藤沢市朝日町一-一一

被告

藤沢税務署長 伊藤義一

右指定代理人

堀内明

西口元

宮地正子

原俊之

毛利深雪

小野雅也

伊藤祐一

東清

前崎善朗

津久井宏

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

被告が原告の所得税について、昭和五七年三月五日付でした。

1  昭和五三年の更正処分のうち、事業所得四三二万一九七円、分離の土地等に係る事業所得四三五万九五七五円、税額二二八万〇一〇〇円を超える部分並びに重加算税及び過少申告加算税賦課決定(ただし、いずれも審査裁決により一部取り消された後のもの)

2  昭和五四年分の更正処分のうち、事業所得五四九万七五五二円、分離の土地等に係る事業所得四二九万七四一四円、税額二五九万二八〇〇円を超える部分並びに重加算税及び過少申告加算賦課決定(ただし、いずれも審査裁決により一部取り消された後のもの)

3  昭和五五年分の再更正処分のうち、事業所得五九七円三七〇〇円、分離の土地等に係る事業所得に係る事業所得四八一万二七二九円、税額二八九万〇九〇〇円を超える部分並びに重加算税及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。

第二本件の争点

原告が、昭和五三年から昭和五五年にかけて、不動産売買を営み、他の者と共同で不動産取引を行つていたことは、当事者間に争いがないが、(1)各取引物件について、共同事業者の範囲及びその持分割合、(2)裏金収入の有無、(3)有限会社桜井工務店(以下「桜井工務店」という。)に対する貸倒れ損失の必要経費算入の可否、(4)土地等とその地上建物を一括して譲渡した場合における「事業所得」及び「分離の土地等に係る事業所得」の収入金額の配分方法、(5)重加算税及び過少申告賦課決定の適法性について争いがあるものである。

第三事業の概要等

一  本件処分の経緯等

原告の昭和五三年ないし昭和五五年分(以下「本件係争分」という。)の各所得税について、原告のした確定申告、これに対して被告のした更正(以下「本件更正」という。)、重加算税の賦課決定、過少申告加算税の賦課決定(この二つの賦課決定を以下「本件賦課決定」という。)等の経緯は、別紙一ないし三記載のとおりである。(この点は当事者間に争いがない。)。

二  原告の主張する本件処分の違法事由

1  昭和五三年について

(一) 本件更正のうち、事業所得四三二万七一九七円、分離の土地等に係る事業所得四三五万九五七五円、税額二二八万〇一〇〇円を超える部分は、原告の所得を過大に認定したものであるから違法である。

(二) 本件賦課決定は、その要件がないのにもかかわらずされたものであるから、違法である。

2  昭和五四年について

(一) 本件更正のうち、事業所得五四九万七五五二円、分離の土地等に係る事業所得四二九万七四一四円、税額二五九万二八〇〇円を超える部分は、原告の所得を過大に認定したものであるから違法である。

(二) 本件賦課決定は、その要件がないのにもかかわらずされたものであるから、違法である。

2  昭和五五年について

(一) 本件更正のうち、事業所得五九七万三七〇〇円、分離の土地等に係る事業所得四八一万二七二九円、税額二八九万〇九〇〇円を超える部分は、原告の所得を過大に認定したものであるから違法である。

(二) 本件賦課決定は、その要件がないのにもかかわらずされたものであるから、違法である。

三  被告の主張

1  原告の事業形態及び所得の区分について

原告は、不動産業を営む者であるが、その事業形態は、同業者である、城田幸男(山城不動産、以下「城田」という。)剱持信男(以下「剱持」という。)及び七宝建設株式会社(以下「七宝建設」といい、原告を含め、以下「原告ら」という。)と共同で不動産取引を行うというもので、取引ごとに各自の持分割合を定めていた。

本件係争年分の右事業による所得金額のうち、事業所得の基因となる土地の取得時期が昭和四四年一月一日以後のものに係る金額については、租税特別措置法二八条の四(昭和五七年法律第八号による改正前のもの。以下「措置法」という。)の規定により、他の所得と区分されて、「土地等に係る事業所得等の金額」として特別の税率が適用され、その余の金額は、総所得金額を構成する「事業所得の金額」に該当することとなる。

2  昭和五三年分の本件更正の根拠及び適法性について

(一) 原告の昭和五三年分の各種所得の金額は、次のとおりである。

事業所得の金額 一〇七二万九九八七円

土地等に係る事業所得等の金額 一八二五万六七五六円

(二) 「事業所得の金額」及び「土地等に係る事業所得等の金額」の計算根拠は別表1のとおりである。

(1) 収入金額及び原価の額

(ア) 原告らは、昭和五三年中において、土地及び建物を共同して譲渡しているが、右譲渡に係る収入金額(各共同事業者へ配分する前の総額をいい、以下「収入金額」という。)及び原価の額並びに原告の持分に係る収入金額及び原価の額は別表2のとおりであり、右物件ごとの収入金額は、土地付建物売買契約書又は、土地売買契約書(以下「契約書」という。)上の売買金額に基づき、物件ごとに、値引き、面積増加代金、追加工事代金及び裏金収入を加算又は減算して認定したものであり、被告主張額と契約書の代金額を対比させると別表5のとおりとなる。

(イ) 原告らの昭和五三年分の土地、建物の譲渡に係る収入金額のうち、契約書記載外の金額(ただし、面積増加及び追加工事による代金並びに値引きによる金額を除く、以下「裏金収入」という。)一八〇万円は、八代住販株式会社(以下、「八代住販」という。)が、原告ら売主から契約書記載の売買金額のほかに裏金の要求をされたことに基づき、同社において、営業上必要と認められる物件である別表二番号4(別表5の五三年分の番号4)の取引に際して、契約書の額四三二〇万円(別途に面積増加代金六九万円がある。)のほかに昭和五三年一〇月一六日原告ら売主に現金で支払つたものである。

(ウ) 原告らは、本件係争分において土地・建物を一括して譲渡しているが、土地譲渡による所得は「土地等に係る事業所得等」に、建物譲渡による所得は「事業所得」に該当するところから、土地及び建物の譲渡による収入金額及び原価の額をそれぞれ各別に算出する必要がある。

ところで、土地・建物を一括して譲渡している取引についての原価の額は土地、建物の別に判明しているが、譲渡価額は、土地・建物を一括しての額が判明しているのみである。そこで、土地・建物の一括譲渡について、土地及び建物のそれぞれの譲渡価額の算定方法は、租税特別措置法通達(以下「措置法通達」という。昭和五五年一月一二月付直所3-2「昭和五三年分所得税関係法令の改正等に伴う所得税の取扱いについて」)の28の4-33(1)を適用し、次のとおりとした。

土地の譲渡価額………土地・建物の譲渡価額から次の建物の譲渡価額を差し引いた額

建物の譲渡価額………建物の原価の額に一四二パーセントを乗じた額

(エ) この結果、原告の「事業所得」及び「土地等に係る事業所得等」に係る収入金額及び原価の額は、次のとおりとなる。

収入金額

事業所得 四八一四万八〇九二円

土地等に係る事業所得等 六一一五万〇七九一円

原価の額

事業所得 三三九〇万七一〇七円

土地等に係る事業所得等 三六九二万〇一七八円

(2) 販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費の額は、原告の領収書等の保存がなく、同金額を実額によつて計算することができないため、不動産売買を業とする者の当該年分の平均的な収入金額に対する販売費及び一般管理費の額の割合(以下「一般経費率」という。)七.五八パーセント(この数値は当事者間に争いがない。)を土地及び建物の譲渡に係る収入金額の合計額に乗じ(一億〇九二九万八八八三円×七・五八パーセント=八二八万四八五五円)、これを「事業所得」及び「土地等に係る事業所得等」のそれぞれの差益金額(収入金額から原価の額を控除した額をいう。以下同じ。)の割合で按分した。

事業所得 三〇六万六七九五円

土地等に係る事業所得等 五二一万八〇六〇円

(3) 雇人費の額

昭和五三年中に剱持は支払つた一二〇万円(この額は当事者間に争いがない。)を「事業所得」と「土地等に係る事業所得等」のそれぞれの差益金額の割合で按分した。

事業所得 四四万四二〇三円

土地等に係る事業所得等 七五万五七九七円

(三) 被告が本訴において主張する原告の事業所得の金額」は一〇七二万九九八七であり、また、「土地等に係る事業所得等の金額」は一八二五万六七五六円であるところ(別表1の所得金額欄参照)、被告が本件更正(裁決後の金額をいう。以下同じ。)において認定した「事業所得の金額」及び「土地等に係る所得税等の金額」は、別紙一の6欄に記載したとおり、いずれも本訴における被告の主張額と同額であるから、本件更正は適法である。

3  昭和五四年分の本件更正の根拠及び適法性について

(一) 原告の昭和五四年分の各種所得の金額は、次のとおりである。

事業所得の金額 二八五八万四七七三円

土地等に係る事業所得等 三四二〇万八三一〇円

(二) 「事業所得の金額」及び土地等に係る事業所得等の金額」の計算根拠は別表1のとおりである。

(1) 収入金額及び原価の額

(ア) 昭和五四年中における原告らの共同譲渡に係る収入金額及び原価の額並びに原告の持分に係る収入金額及び原価の額は別表3のとおりであり、右物件ごとの収入金額は、契約書上の売買金額に基づき、物件ごとに、値引き、面積増加代金、追加工事代金及び裏金収入を加算又は減算して認定したものであり、被告主張額と契約書の代金額を対比させると別表5のとおりである。

(イ) 原告らの昭和五四年分の土地、建物の譲渡に係る収入金額のうち、裏金収入は、いずれも八代住販が、原告ら売主から契約書記載の売買金額のほかに裏金要求をされたことに基づき、同社において、営業上必要と認められる物件について、次のとおり合計八五〇万円を支払つたものである。

(a) 別表3番号8(別表5の五四年分の番号8)の取引に際しては、契約書の額三二〇〇万円(別途に追加工事代金六〇万円がある。)のほかに、裏金として二〇〇万円を昭和五四年四月六日原告ら売主に現金で支払つた。

(b) 別表3番号9(別表5の五四年分の番号9)の取引に際しては、契約書の額三四〇〇万円のほかに、裏金として二〇〇万円を昭和五四年一〇月六日原告ら売主に現金で支払つた。

(c) 別表3番号10(別表5の昭和五四年分の番号10)の取引に際しては、契約書の額六〇〇〇万円のほかに、裏金として昭和五四年一〇月三〇日に一五〇万円、同年一一月一五日に一五〇万円、そして同年一一月三〇日に一五〇万円、合計四五〇万円を原告ら売主に現金で支払つた。

(ウ) 土地の譲渡価額及び建物の譲渡価額の区分算定の必要性並びに算定の方法については、昭和五三年分(前記2(二)(1)(ウ))と同様(ただし、措置法通達は昭和五四年分による。)である。

(エ) この結果、原告の「事業所得」及び「土地等に係る事業所得等」に係る収入金額及び原価の額は、次のとおりとなる。

収入金額

事業所得 一億一七七四万一六七四円

土地等に係る事業所得等 一億〇七八二万二六五九円

原価の額

事業所得 八二八八万九九七五円

土地等に係る事業所得等 六六一一万四五二〇円

(2) 販売費及び一般管理費

昭和五三年分と同様の理由と方法により、一般経費率六・〇七パーセント(この数値は当事者間に争いがない。)を適用し、次のとおり算定した。

事業所得 六二三万二七八四円

土地等に係る事業所得等 七四五万八九七一円

(3) 雇人費の額

昭和五四年中に剱持に支払つた七万五〇〇〇円(この額は当事者間に争いがない。)を「事業所得」と「土地等に係る事業所得等」の差益金額の割合で按分した。

事業所得 三万四一四二円

土地等に係る事業所得等 四万〇八五八円

(4) 桜井工務店に対する貸倒損失の必要経費算入について

(ア) 原告は、桜井工務店に対する貸倒れ損失一四二〇万円を必要経費に算入すべきであると主張する。しかしながら、貸付動機がなく、担保を徴することもなく、利息の定めもないなど、貸付条件が不自然であり、その証拠とし提出された約束手形四通は、その振出日に真実振り出されたか極めて疑わしいので、その債権の存在自体疑問がある。

(イ) 貸倒損失として必要経費に算入することができる貸金債権の範囲について、所得税法五一条二項は、事業の遂行上生じた貸付金債権に限られると規定しており、原告の桜井工務店に対する金銭の貸付は、原告の営む不動産業の遂行上、客観的一般的に通常必要とされるものではない。したがつて、原告・桜井工務店間には貸付があり、貸倒れが発生したとしても、原告の事業所得の計算上必要経費に算入することはできない。

(ウ) 税法上特定の債権が貸倒れとして所得税法五一条二項の適用を受け、必要経費に算入されるためには、債権の取立てが不可能になるか、あるいは債権回収の見込みのないことが客観的に確実となることが、当該事業年度内に確定した場合でなければならず、また事実上貸倒れと認められるためにはそれだけでは十分ではなく、更にその債権を放棄するなどして償却の措置をしたという事実が必要であると解されるところ、桜井工務店は、昭和五五年一〇月までの不動産売買取引の手伝いをしてその報酬を原告から受領しており、原告は本件債権を放棄していない。してみれば、原告が貸倒れを主張する昭和五四年において、本件債権の取立てが不能であるとか、債権の回収の見込みがなかつたとはいえず、また債権を放棄した事実もないものであるから、貸倒れ事由が存在しないことは明らかであるので、原告主張の金額を必要経費に算入することはできない。

(三) 被告が本訴において主張する原告の「事業所得の金額」は二八五八万四七七三円であり、また、「土地等に係る事業所得等の金額」は三四二〇万八三一〇円であるところ(別表1の所得金額欄参照)、被告が本件更正において認定した額は、別紙二の6欄の記載したとおり「事業所得の金額」二二一二万〇六二五円、「土地等に係る事業所得等の金額」二六四七万二四五八円、「納付すべき税額」二五六一万八五〇〇円である。よつて、被告が本件更正において認定した「納付すべき税額」は、本訴における被告の主張額の範囲内であることが明らかであるから、本件更正は適法である。

4  昭和五五年分の本件更正の根拠及び適法性について

(一) 原告の昭和五五年分の各種所得の金額は、次のとおりである。

事業所得の金額 一二七二万一六一八円

土地等に係る事業所得等 二六二六万五〇九五円

(二) 「事業所得の金額」及び「土地等に係る事業所得等の金額」の計算根拠は別表1のとおりである。

(1) 収入金額及び原価の額

(ア) 昭和五五年中における原告ら、共同譲渡に係る収入金額及び原価の額並びに原告の持分に係る収入金額及び原価の額は別表4のとおりであり、右物件ごとの収入金額は、契約書上の売買金額に基づき、物件ごとに、値引き、面積増加代金、追加工事代金及び裏金収入を加算又は減算して認定したものであり、被告主張額と契約書の代金額を対比させると別表5のとおりとなる。

(イ) 原告らの昭和五五年分の土地、建物の譲渡に係る収入金額のうち、裏金収入三〇〇万円は、八代住販が、原告ら売主から契約書記載の販売金額のほかに裏金の要求をされたことに基づき、同社において、営業上必要と認められる物件である別表4番号1(別表5の五五年分の番号1)の取引に際して、契約書の額五五八〇万円のほかに、昭和五四年一二月二〇日原告ら売主に現金で支払つたものである。

(ウ) 土地の譲渡価額及び建物の譲渡価額の区分算定の必要性並びに算定の方法については、昭和五三年分(前記2(二)(1)(ウ))と同様(ただし、措置法通達は昭和五五年分による。)である。

(エ) この結果、原告の「事業所得」及び「土地等に係る事業所得等」に係る収入金額及び原価の額は、次のとおりとなる。

収入金額

事業所得 五四二〇万八六〇一円

土地等に係る事業所得等 七〇〇五万四七六三円

原価の額

事業所得 三七七〇万七九一四円

土地等に係る事業所得等 三五九八万七三九一円

(2) 販売費及び一般管理費

昭和五三年分と同様の理由と方法により、一般経費率九・三二パーセント(この数値は当事者間に争いがない。)を適用し、次のとおり算定した。

事業所得 三七七万九〇六九円

土地等に係る事業所得等 七八〇万二二七七円

(三) 被告が本訴において主張する原告の「事業所得の金額」は一二七二万一六一八円、「土地等に係る事業所得等の金額」は二六二六万五〇九五円であり(別表1の所得金額欄参照)、また「納付すべき税額」は一九二一万六七〇〇円であるところ、被告が本件更正において認定した額は、別紙三の2欄に記載したとおり、「事業所得の金額」一二〇二万八九五八円、「土地等に係る事業所得等の金額」二六三五万六二一八円、「納付すべき税額」一八八四万八九〇〇円である。よつて、被告が本件更正において認定した「納付すべき税額」は、本訴における被告主張額の範囲内であるから、本件更正は適法である。

5  本件賦課決定の適法性について

(一) 被告が本訴において主張する原告の本件係争年分の加算税額は、別表6のとおりである。

なお、重加算税の基礎となる税額及び重加算税については、昭和五九年法律第五号による改正前の国税通則法(以下「通則法」という。)一一八条三項及び六八条一項を適用した。

(二) 通則法六八条一項に定める重加算税は、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときに、過少申告加算税に代えて賦課することとされている。

ところで、原告は、本件係争年分の確定申告に際し、別紙一ないし三のとおりの所得金額及び申告納税額で申告をしているが、その申告書によると、所得金額を算出する基礎となる収入及び必要経費につき、わずかに科目の金額並びに月別売上(収入)金額及び仕入金額が表示されているにとどまり(ただし、昭和五三年分のみ給料債権の簡単な内訳が付されている。)、それ以上の具体的記載はされていない。

原告は、確定申告後における原処分調査手続の過程では、調査に非協力であり、調査担当者が帳簿書類の提出を求めたにもかかわらず、これに一切応じなかったところ、異議申立以降は、本訴も含めて一貫して八代住販売からの裏金の受領を否認しており、また、被告が認定した者以外に原告と共同事業を営んだ者がいるとし、収入及び原価の計算においてそれらの者の持分を控除すべきであると主張していることが明らかである。

しかし、原告に八代住販からの裏金収入があり、また、原告が被告の認める者以外の者と共同事業を行つていないことは、証拠上明らかであり、これらの事実の性質上、原告はそのことを当然認識していたものである。

そうすると、原告は、確定申告の際、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を、それが現存するにもかかわらず、ことさら存在しないものとして(裏金関係)右の計算を行い、あるいは、それが一部存在しないにもかかわらず、ことさら存在するかの如く仮装して(共同事業関係)所得等を計算した上納税申告書を提出するに至つたものであるということができるが、このような場合は、通則法六八条一項にいう「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し又は仮装したところに基づき納税申請書を提出していたとき」に該当することは明らかである。

(三) 重加算税の基礎となる税額は、本件のように更正処分を経ているものについては、その処分によつて新たに納付すべき税額のうち、隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額を控除した税額をいう(通則法六八条、六五条、三五条二項)のであるが、裁決により変更された後の更正処分(したがつて、昭和五四年分の貸倒損失は除かれる。)により納付すべき税額は、いずれも原告の前記仮装又は隠蔽の事実に基づくものであるから、重加算税の基礎となる税額は右新たに納付すべき税額とは一致することになる(各販売物件に係る原価総額及びいわゆる平均的販管比率については、従来から当事者間に争いがないから、右仮装又は隠蔽事実以外の事実が新たに納付すべき税額に影響することはない。)。

(四) そうすると、被告が本訴において主張する本件係争年分の加算税額は、前記(一)に記載した金額となるところ、本件加算税の賦課決定処分は、別表7のとおりであつて、いずれも、被告主張額の範囲内であるから、本件賦課決定は適法である(なお、同一の更正に係る加算税である限り、過少申告加算税の賦課決定と重加算税の賦課決定とは処分としての同一性を有し、したがつて、加算税の賦課決定処分の適法性は、両加算税の和(総額)という見地から判断すべきである。)。

四  原告の認否及び反論

1  原告の主張する所得金額及び計算根拠について

(一) 本件係争年分の「事業所得の金額」及び「土地等に係る事業所得等の金額」は別表8記載のとおりである。

(二) 昭和五三年分の「事業所得の金額」及び土地等に係る事業所得等の金額」の計算根拠は別表9記載のとおりである。

(三) 昭和五四年分の「事業所得の金額」及び「土地等に係る事業所得等の金額」の計算根拠は別表10記載のとおりである。

(四) 昭和五五年分の「事業所得の金額」及び「土地等に係る事業所得等の金額」の計算根拠は別表11記載のとおりである。

2  共同事業者の範囲及びその持分割合

本件係争年分における共同事業者及び原告の持分割合は別表9ないし11の通りである。

3  裏金収入について

被告主張の裏金収入についてはすべて否認する。

4  貸倒損失について

昭和五四年分について、桜井工務店に対する合計一四二〇万円の貸倒損失が発生したものであり、右損失は裁決においても認められているものである。

5  土地等とその地上建物を一括して譲渡した場合における「事業所得」及び「分離の土地等に係る事業所得等」の収入金額の配分方法について

被告は、措置法通達28の4-33(1)の適用を当然の前提としているが、同項は、納税者が同項の方法を採用していること、継続適用をすることが要件となつているところ、本件においては、原告がこれらの要件を充足するものでないことは明らかであるので、同項を適用すべきではなく、その(2)を適用すべきである。

第四争点に対する判断

一  共同事業者の範囲及びその持分割合について

1  一般に、所得を生ずる原因となる経済活動を二人以上の者が共同して行つたといえるためには、所得税法の趣旨、目的に照らし、その経済活動による経済力の獲得又は、増加をそれらの者がそれぞれ支配していることを必要とし、これらの者が自己の計算と危険において主体的にその経済活動を行つていることが必要であつて、単に右活動に何らかの形で関与すれば足りるというものではない。したがつて、共同事業であると認められるためには、当該経済活動を行うことについて相互に意思の連絡があり、その意思決定に各人が主体的に関与するとともに、これを各人が主体的に実現するためにそれぞれの分担又は役割を遂行することが不可欠であるうえ、右活動の結果生じた所得に対する各人の持分割合が右意思決定の中で定められ、これを合理的に算出できる場合でなければならない。

ところで、本件の共同事業は、茅ヶ崎市柳島近辺の土地を地主から買い上げて、これを宅地として開発し、さらに同土地上に建物を建築して、土地付建物を他へ売却するというものである(原告本人、証人今出川、同剱持)。そして、右事業に必要な宅地の開発(ただし、行政関係の諸手続は除く。)及び建物の建築は、他の業者に請け負わせ、原告らは、主として土地の買い上げ及び土地付建物の譲渡に当たつていた(乙第二七ないし第三五号証、原告本人、証人今出川、同剱持)。本件において、原告は、右事業への参加者及び各自の持分割合は、各不動産取引ごとに定められていたとして、右事業に係る総収入と総原価に自己の持分割合を乗じて所得を算出しており、被告も、具体的な共同事業者の範囲及びその持分割合を一部分争いつつ、基本的にはこの算出方法によつて所得を算出している。

2  本件共同事業に係る個々の物件について、共同事業者及びその持分割合を認定した証拠は、証人棚木の証言のほか以下のとおりである。これらの証拠によれば、被告主張のとおりの共同事業者及び持分が認められる。

(一)(1) 別表2の1については乙第六号証の一ないし五、第二七号証

(2) 別表2の2については当事者間に争いがない。

(3) 別表2の3については乙第八号証

(4) 別表2の4については、乙第九、第三七号証の二

(5) 別表2の5については乙第一〇、第三七号証の二

(二)(1) 別表3の1については乙第一一号証、第二九号証

(2) 別表3の2については乙第一二、第三〇、第三六号証

(3) 別表3の3については乙第一三、第三一号証

(4) 別表3の4については、乙第一四、第三二、第三六号証

(5) 別表3の5については乙第一五、第三三号証

(6) 別表3の6については乙第一六、第三四号証

(7) 別表3の7については乙第一七、第三七号証の二

(8) 別表3の8については乙第二二、第三六、第三七号証の二

(9) 別表3の9については乙第一八、第三七号証の二

(10) 別表3の10については乙第一九、第三七号証の二

(三)(1) 別表4の1については乙第二〇号証、第三八号証の二

(2) 別表4の2については当事者間に争いがない。

(3) 別表4の3については乙第二一、第三五、第三六号証

(4) 別表4の4については、乙第二四、第三九証の二

(5) 別表4の5については乙第二五、第三八号証の二、第三九号証の二

(6) 別表4の6については乙第二四、第三八号証の二、第三九号証の二

3  原告主張を裏付ける証拠についての判断

共同事業についての事実の立証責任は被告にあるが、前記のとおり、被告は各取引物件ごとに共同事業者及びその持分割合について立証を尽くしており、そのとおりと一応認められるので、原告がそれ以上に他の共同事業者が存在し、かつ、自己の持分割合が減り、その結果課税所得金額が減少すると主張する場合は、原告において、これらの事実が存在するかもしれないと疑わせるに足りる程度に反証すべきであると解されるところ、原告の反証はその程度に至つていないものである。

すなわち、原告本人尋問の結果、証人小野、同剱持及び甲第五、第四六号証とその各添付資料は、これに対する客観的裏付けを欠くことが明らかであり、(証人小野、同剱持、甲第四六号証、乙第四八号証)、採用できない。その他の証拠に対する判断は、以下のとおりである。

(一) 桜井工務店について

別表4の番号1の物件について甲第一二号証の一(売買契約書)、別表3の番号2の物件について甲第一六号証の一(領収証)、別表2の番号3の物件について乙第四二号証の別紙4(領収証)、別表3の番号1の物件について同号証の別紙5(領収証)、別表4の番号3の物件について同号証の別表8(領収証)、いずれの物件について発行されたのか判然としない第甲一六号証の二、三(いずれも領収証)が存在するが、これらのうち、領収証は桜井工務店が原告の仕事の手伝いをしたことに対して発行されたものであり(乙第四二号証)、甲第一二号証の一はその成立の真正を認めることができない(乙第四九号証)ので、いずれも、桜井工務店が共同事業者であつたことを認定するための証拠資料とはならない。

(二) 明月節男(半谷工業)について

別表3の番号6の物件について甲第五号証の資料No.21(領収証)があるが、これは、同領収証のただし書に明記されているように、明月が原告から右物件に関し工事代金を領収したことを証するものであるから、明月が共同事業者であつたことを認定するための証拠資料とはならない。

(三) ゼンキ工業について

別表2の番号3の物件について甲第二一号証(請負契約書)及び同第二二号証の一、二(領収証)があるが、甲第二一号証(請負契約書)については、その成立の真正を認めることができない。また、甲第二二号証の一、二(領収証)は、甲第二一号証の請負契約に係るものであるから、甲第二一号証と関連づけて評価すべきところ、同号証の真正な成立を認めることができず、また、甲第二二号証の一、二の宛先の記載の真実性は疑わしいので、いずれも、ゼンキ工業が共同事業者であつたことを認定するための根拠資料とすることはできない。

(四) 剱持について

剱持が共同事業者であるか否かについての争いのある物件は、別表2の番号4、5、同3の番号7、9、10、同4の番号1ないし6の各物件であり、これらについて、剱持がいずれも原告及び七宝建設と共同事業である旨主張されている。これらの物件を大別すれば、下川原の物件、向川原の物件、柳島二丁目の物件、柳島海岸の物件の四種類となるので、その分類に従つて、以下検討する。

(1) 下川原の物件(別表2の番号5)について

甲第三六号証は、本件更正処分の異議申立以降の時点で小野税理士が作成したもの(弁論の全趣旨)で、客観的な立証に基づくものではないので、採用できない。

(2) 向川原の物件(別表3の番号7)について

これらについては、前掲証拠のほかにはなんら証拠はない。

(3) 柳島二丁目の物件(別表4の番号1)について

甲第一二号証の一は、(一)で述べたとおり、真正に成立したものとは認められない。甲第一二号証の三も、改ざんの形跡があり、甲第一二号証の二と比較して売渡し人の筆跡が不自然であることから、その成立の真正を認めることはできない。

(4) 柳島海岸の物件(別表2の番号4、同3の番号9、10、同4の番号4ないし6)について

甲第三四号証の一ないし三(領収証)は真実当時作成されたものか疑わしく、仮に真実当時作成されたものであつたとしても、その作成目的、物件との対応関係が不明であるから、どのような趣旨の下にこれらの領収証が発行されたものであるかについては判然としないので、これらの証書は証拠価値がない。また、甲第三三号証(領収証)も、どの物件に関するものか不明であり、証拠価値はない。

(5) 以上のとおり、原告主張の事実については、その存在を疑わせるに足りるだけの証拠はない。

二  裏金収入について

原告らは、本件係争年分の土地、建物の譲渡に際し、買主である八代住販から契約書記載以外の金銭(裏金収入)を受けたものである。(乙第一号証、第二号証、甲第三八号証、証人棚木)。

右認定に反する原告人尋問の結果、証人剱持、同今出川の各証言は、前掲各証拠に照らし、採用できない。

三  桜井工務店に対する貸倒損失の必要経費算入否認について

1  原告は、本件係争分に関する原処分の調査及び異議申立てに係る調査において、この主張をせずに、審査請求において初めてこれを主張するに至つたものである(証人棚木、甲第一号証、第四三号証の一ないし三)。

原告は、貸倒損失の基因となつた貸付があつたことを証する資料として、甲第五号証資料No.24添付の四通の約束手形を提出しているが、これらの手形には支払銀行の不渡付箋が付されておらず、手形交換に回されていないので、その振出日に真実振り出されたかどうかは極めて疑わしく、また、貸付動機がなく、担保を徴せず、利息の定めもないなど、貸付条件が不自然であるので、その債権の存在自体に疑問がある。

2  右の点をひとまずおくとしても、貸倒損失として必要経費に算入することができる貸金債権の範囲について、所得税法五一条二項は、その事業の遂行上生じたものに限られると規定しているところ、本件においては、桜井工務店の代表者が原告の取引の手伝いをしていたにすぎないのであるから(乙第四二号証。桜井工務店を共同事業者と認めることができないことは、前記認定のとおりである。)、原告の桜井工務店に対する金銭の貸付は、原告の営む不動産業の遂行上、客観的一般的に通常必要とされるものと認めることはできない。したがつて、原告・桜井工務店間に貸付があり、貸倒れが発生したとしても、原告の事業所得の計算上これを必要経費に算入することはできない。

四  建物と土地等を一括して譲渡した場合における「事業所得」及び「分離の土地等に係る事業所得」の収入金額等に係る事業所得」の収入金額の配分方法について

個人が、他の者から取得した国内にある土地等で事業所得又は雑所得の起因となるもののうち一定の要件にあてはまるものを譲渡した場合には、措置法二八条の四の規定により、その譲渡益に対して土地等の事業所得等として、通常の事業所得又は雑所得に対するよりも高い税率により所得税が課される(以下「土地重課」という。)こととされている。

措置法通達(乙第三ないし第五号証)28の4-33(1)は、継続適用を条件として、土地等と新築建物を一括して譲渡した場合に限り、建物の取得価額に適正利益率(一四二パーセント)を乗じ、その金額を譲渡収入金額から控除する方法により、土地等の建物の譲渡による収入金額の区分計算ができるとこととしたものである。この取扱は、社団法人不動産協会ほか、六団体から国税庁に要望があり、検討の結果、その申出を認めることとしたものであり、この区分方法は、不動産業界において、合理的なものとされ、慣行化している(弁論の全趣旨)。

原告は、納税者が措置法通達28の4-33(1)の簡便法を採用していない場合は、通達(2)の原価割合によつて区分するのが適切である旨主張する。

しかし、本件においては、原告が税務調査に協力せず、原価を認定するための資料の提供もなかつたため、原価を基に土地等及び建物の対価を区分計算することは不可能であつた。そこで被告は、不動産業界において合理的なものとされ、慣行化している措置法通達28の4-33(1)を用いたものである。右通達の規定は、<1>新築した建物を土地等と一括譲渡した場合において、<2>継続適用を要件として適用されるところ、本件においては、<2>の要件を満たしていない。しかしながら、右通達の規定以外に適正と思われる他の方法を採り得ない本件にあつては、措置法通達28の4-33(1)を用いることも、あながちな不合理というこはできない(原告も、措置法通達28の4-33の規定を用いること自体には不服を述べておらず、その(1)ではなく(2)の規定を適用すべきであると主張しているに過ぎない。)。そして措置法通達28の4-33を用いる場合、(1)又は(2)のいずれを適用するかは、土地等と建物の譲渡による収入金額の合計額が土地等の取得価額と建物の取得価額との合計額(昭和五三年分についてはこれに一四二パーセントを乗じて計算した額に相当する金額)を超えている場合には(1)が、それ以外の場合には(2)が適用されることとなり、本件譲渡のいずれも、土地等と建物譲渡による収入金額の合計額が土地等の取得価額と建物の取得価額の合計額(昭和五三年分については一四二パーセントを乗じて計算した金額)を超えていることから、(1)を適用したものであるから、被告が原価割合に代わる方法として、右通達を用いたことは相当認められるものである。

五  以上認定したところにより計算すると、いずれせ被告主張どおりの収入金額及び原価の額、販売費及び一般管理費並びに雇人費の額を認めることができ、(一)昭和五三年分の本件更正における事業所得の金額及び土地等に係る事業所得等の金額は、いずれも本訴における被告の主張額と同額であり、(二)昭和五四年分の本件更正における事業所得の金額及び土地等に係る事業所得等の金額及び納付すべき納税額は、本訴における被告の主張額の範囲内であり、(三)昭和五五年分の本件更正における事業所得の金額及び土地等に係る事業所得等の金額及び納付すべき税額は、本訴における被告の主張額の範囲内であり、本件更正はいずれも適法である。

六  本件賦課決定の適法性について

1  通則六八条一項に定める重加算税は、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときに、過少申告加算税に代えて賦課することとされている。

ところで、原告は、本件係争年分の確定申告に際し、別紙一ないし三のとおりの所得金額及び申告納税額で申告したが、その申告書によると、所得金額を算出する基礎となる収入及び必要経費につき、わずかに科目の金額並びに月別売上(収入)金額および仕入金額が表示されているにとどまり(ただし、昭和五三年分のみ給料債権の簡単な内訳が付されている。)、それ以上の具体的記載はされていない(証人小野、弁論の全趣旨)。

原告は、確定申告後における原処分調査手続きの過程では調査に非協力であり、調査担当者が帳簿書類提出を求めたにもかかわらず、これに一切応じなかったところ(証人棚木)、異議申立以降は、本訴も含めて一貫して八代住販からの裏金の受領を否認しており、また、被告が認定した者以外に原告と共同事業を営んだ者がいるとし、収入及び原価の計算においてそれらの者の持分を控除すべきであると主張している(弁論の全趣旨、訴訟上の出来事)。

しかし、原告には八代住販から裏金収入があり、また、原告が被告の認める者以外の者と共同事業を行つていないことは、既に認定したとおりであり、これらの事実の性質上、原告はそのことを当然認識していたものというべきである。

そうすると、原告は、確定申告の際国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を、それが現存するにもかかわらず、ことさら存在しないものの如く隠蔽して(裏金関係)右の計算を行い、あるいは、それが一部存在しないにもかかわらず、ことさら存在するかの如く仮装して(共同事業関係)所得等を計算した上納税申告書を提出するに至つたものであるということができるが、このような場合は、通則法六八条一項にいう「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したころに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当すると解するのが相当である。

2  重加算税の基礎となる税額は、本件のように更正処分を経ているものについては、その処分によつて新たに納付すべき納税のうち、隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額を控除した税額をいう(通則法六八条、六五条、三五条二項)のであるが、裁決により変更された後の更正処分(したがつて、昭和五四年分の貸倒損失は除かれれる。)により納付すべき税額は、いずれも、原告の前記仮装又は隠蔽の事実に基づくものであるから、重加算税の基礎となる税額と右新たに納付すべき税額とは一致することになる(前記のとおり、各販売物件に係る原価総額及びいわゆる平均的販管比率については、当事者間に争いがないから、右仮装又は隠蔽事実以外の事実が新たに納付すべき税額に影響することはない。)。

3  そうすると、被告が本訴において主張する本件係争年分の加算税額は、別表6記載の金額になるところ、本件加算税の賦課決定処分は、別表7のとおりであつて、いずれも被告主張額の範囲内であるから、本件賦課決定は適法である(なお、同一の更正に係る加算税である限り、過少申告加算税の賦課決定と重加算税の賦課決定は、無関係な別個独立の処分ではなく、重加算税の賦課は、過少申告加算税として賦課されるべき一定の税額に加重額に当る一定の金額を加えた額の税を賦課する処分として、過少申告加算税に相当する部分を含んでいるものと解するのが相当であるから、加算税の賦課決定処分の適法性は両加算税の和(総額)という見地から判断すべきである。)。

4  以上のとおり、被告が本訴において主張する本件係争年分の加算税額は別表6のとおりであり、本件賦課決定の加算税額は別表7のとおりであつて、いずれも被告主張額の範囲内であるから、本件賦課決定はいずれも適法である。

第五結論

よつて、本件更正及び本件賦課決定はいずれも適法であり、原告の請求はいずれも理由がないので、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐久間重吉 裁判官 辻次郎 裁判官 伊藤敏孝)

別紙一

昭和五三年分

<省略>

別紙二

昭和五四年分

<省略>

別紙三

昭和五五年分

<省略>

別表1

<省略>

別表2 昭和53年分

<省略>

別表3 昭和54年分

<省略>

別表4 昭和55年分

<省略>

別表5 共同事業に係る収入金額

<省略>

別表6

<省略>

別表7

<省略>

別表8

<省略>

別表9 昭和53年分

<省略>

別表10 昭和54年分

<省略>

別表11 昭和55年分

<省略>

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